恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
知っている。
この声を知っている。この声の主を・・・
私の世界の中で一番恐ろしくて、何より誰よりあらがえない。
気がつけば、私はボロボロと涙を流しながら店を飛び出していた。
「おい沙和・・・っ」
無我夢中で店を飛び出し、駐車場まで走って出てきた私に羽瀬さんが追いつく。
「おい、急にどうしたんだ」
そう尋ねる羽瀬さんの声は怒ってはいなくて、私の事を心配するように優しい。
その声に力が抜けて、私はその場に倒れるように座り込んだ。
「嫌、嫌、怖いっ・・・」
こわい。
頭に酸素が回らない。
ただ自分の中の恐怖心が頭を支配し、まわりの声も音も耳に届かなくなる。
目の前の景色がゆっくりとまわり、私は冷たい涙の温度を頬に感じながら意識を手放した。