恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】

警察に届けようなんて馬鹿な事。

馬鹿な事。

そう言われて、私は思わず俯いていた顔を上げた。

天津先輩の言う通り、お姉ちゃんは私のせいでいなくなってしまった。私の身代わりになって、味わう必要のない痛みを感じながら、苦しんで死んでいった。

天津先輩からお姉ちゃんを奪い、幸せを奪った。

抱えきれない罪悪感に押しつぶされて、天津先輩から乱暴されている事を誰にも打ち明けられなかったし、勿論警察に被害届けを出すつもりも無かった。

天津先輩もそれを分かって私に手を出していたように思う。

「玲二君が刑務所に入る事になったら、亡くなった沙菜の顔に泥を塗る事になるわ。それに親戚にもご近所の人達にも何て思われるか・・・」




──そういう訳で、天津先輩を警察につきだすような事はしなかった。天津先輩は私達の家を出て、私達との関わりも絶った。

連絡を取る事もなく、今どこで何をしているのか、ずっとわからないまま時が経った。
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