恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
「い、嫌、私は・・・」
「嫌?沙菜はきっと寂しがっているよ。沙和のせいで、もう何年もずっと一人きりなんだから」
男がささやくような声量で、でもしっかりと耳の奥に届くような声でそう語りかける。
男に対する怒りで身体が震えそうになる。今すぐに男を蹴り飛ばしてやりたかったが、それより沙和の様子が危なかった。
「おい沙和、しっかりしろっ」
「嫌、嫌、嫌・・・っ」
自分の声がまるで聞こえていない。怯えるように目をぎゅっと閉じ、両手を頭にやって首を不規則に左右に振り続ける沙和に、俺は触れる事も出来ない。
「沙和は本当に相変わらずだなぁ。・・・今日の所はまあいいや。また迎えにくるよ。なるべく近いうちに必ず殺しにくるから」
「おい貴様・・・っ」
その場を離れようとする男をそのまま逃したくなかったが、追いかけて沙和の側から離れる事も出来ない。
君の悪い笑みを浮かべながら立ち去る男をこの上ない程に睨みつけ、俺は沙和に声をかけ続けた。