恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
「私、そういえばすっぴんだった・・・」
すっぴんで砂川君と香坂さんに会ってしまったのだとハッとし、今度こそ盛大に肩を落とした。
学生時代ならともかく、社会人として社会に出る歳になった今、人に・・・それも男性に化粧をしていない顔を見せる機会などそうそうある筈も無かった。
深いため息をつきながらもう一度化粧ポーチを手にとり、下地を肌に重ねる。肌があまり強くないため、沙和のメイクの肯定の中にファンデーションは含まれていない。
下地を済ませた肌の上に薄くルースパウダーを重ねた時だった。
鞄の中に入れていた携帯が、着信のバイブレーションで震えたのが分かった。
鞄から慌てて携帯を取り出し、”非通知”と表示された画面を見て、一瞬ビクッとなる。
いつもなら、非通知からの電話には出ないようにしている。
だが、もしかしたらという嫌な予感に駆られ、私は震える指でボタンをスライドさせ、電話をとった。