恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】


『早くそこを出て行かないと、俺、沙和をかくまってる人間に何するか分からないよ?』

───天津のその言葉に、思わず目まいがしそうになった。

だが、体は不思議と震えていなかった。静かに涙を流しながら床に落ちた携帯を取り、細い声で叫んだ。

「出て行くから・・・だから、お願いだから、やめて・・・っ」

沙和のその言葉を天津が最後まで聞いたのかは定かではない。

ツー、ツー と電話の終了した無機質な音が携帯から響き、瞬間その場所に膝からくずれ落ちた。

「・・・はぁっ・・・はぁ・・・っ」

抱え切れ無いほどの恐怖心に呼吸が荒くなる。だがすぐに気を奮い立たせ、意図的に唇を血が滲む程強く噛んだ。

こうしてはいられない。──早くここから出ないと。

天津の事は勿論怖い。恐ろしくて恐ろしくてたまらない。でも、自分のせいで砂川君や楓さんが傷つくような事があったら。

そっちの方が、ずっと怖い。耐えられない。
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