恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
行く宛てもないというのは、まさにこういう事を言うのだろうと痛感する。
それでも足を止める訳にはいかず、目的地もないまま私はさまようようにただ歩いた。
会社も、有給を使い続ける訳にもいかない。天津がいつ捕まるかなんてわからないのだから、無期限にホテルを転々とするのも金銭的に難しい。
「やっぱり、マンションに帰るしかないか・・・」
いくら家を知られているとは言っても、そうする他に術がない。
そう思い立ち、マンションの方向に足を進めようとした時だった。
一台の見覚えのある黒塗りの車が遠くから近づきながら減速し、それはやがて沙和の側で停まった。
「・・・・。」