恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
車の窓がサーっと降り、中から顔を覗かせたのはハンドルを握った羽瀬君だった。
「こんな所で何やってんだ」
「あ・・・」
(どうしてここに、羽瀬君が)
一瞬ヒヤッと体が冷めるような感覚があった。
考えるより先に体が動いた。踵を返すように、その場から逃げようとした私を羽瀬君が呼び留める。
「おい沙和!」
車のドアが勢いよく開く音が耳に刺さった。すぐに走って逃げた筈なのに、あっけないほどにはやく羽瀬君に腕を捕まれた。
瞬間に、ゾッと全身に鳥肌が立つのが分かった。
「羽瀬君、お願い、離して・・・」
震える声でそう懇願したが、羽瀬君は私の手を離してくれない。それどころか、私の後ろに手を回し、そのまま私の体を抱きかかえた。
「い、嫌、お願い降ろしてっ、羽瀬君!」
金切り声でそう叫ぶ。
が、羽瀬君はまるで私の声が聞こえていないかのように私を抱きかかえたままズカズカと車まで進み、羽瀬君の腕の中で懸命に暴れる私をそのまま車の中に放り込んだ。