恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
『…そうだな、まぁ、そこにいてくれた方が安全だな…。相澤の病気も最近は随分と良くなったが、それでも気をつけてやってくれ』
「え?」
沙和の病気が随分と良くなったという言葉に小さく引っかかる。
そうだろうか。
確かに沙和を強引に抱きかかえて車に押し込んだり、強引に家まで連れてきたりと沙和にとっては酷であろう事を色々とやってしまったのだが、沙和が発作を起こすような事は無かった。
だが、その小さな身体は小刻みに震え、腕には鳥肌が立っていた事には気がついていた。
一定の距離を割ると反射的に沙和の身体がビクっと震えるように反応するのも、初めて会った日と変わっていない。
それを随分良くなったと称するのは、少しばかり大げさな気がした。
「そんなに変ったか?」
『あぁ、不安階層表の最後の項目を相澤から実践したいって言われた時には驚いたけどな』
「…は?」
そんな隼斗の言葉に思わず目を剥いた。おぼろげだが、沙和から見せて貰った不安階層表の内容を思い出す。
不安階層表の最後の項目は確か…
── 男性から身体に3秒以上触れられる 。
「沙和が、自分からって…それで、上手くいったのか?」
『あぁ』
「…そうか」
隼斗は疑う事なく、沙和の病気が改善していると思っている。
確かに治療にかかる前に比べたら改善している事にかわりは無いのだろうが、沙和が男にそこまで出来たのは、相手が隼斗からだったじゃないのか。
もし相手が俺だったら、きっと沙和はそこまで出来ない。
拭えない、確信に近い懸念を抱きながら、俺は隼斗との電話を終えた。