恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】




電話を終えリビングに戻ると、沙和が少しだけ俯いたまま、心細そうな表情で椅子に腰掛けていた。

...まぁその、沙和の表情のワケも理解出来る。ただでさえ大変で精神状態も安定しないような状況で、いわば強制拉致、その上唐突にプロポーズまで受けたのだ。

居心地が悪いのも当然だろう。

「沙和」

そう声をかけると、沙和が一瞬ビクッと体を震わせて俺を見上げた。俺を見る沙和の瞳に、ほのかな緊張と怯意が浮かぶのが分かる。

隼斗と俺は違う。隼斗と沙和が重ねた時間を考えたら、ついこの間沙和と見合いをしたばかりの俺なんか足下にも及ばない事くらい、自分でも痛い程分かっている。

「あの…羽瀬君…?」

「え?…あぁ」

言われて、ぼうっと沙和を見つめてしまっていた事に気がつく。

椅子に座ったままこちらを見上げる沙和の表情はこころもとない。
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