恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
鮭を頬張っていた羽瀬君が、私の言葉に顔を上げる。
「親切って、俺が?」
「はい。あの、こんなによくしてくれて、私‥」
せめて羽瀬君には、きちんとお礼を言っておきたい。そんな内心が表情に出てしまっていたのか、羽瀬君が訝しげな顔になって箸を止めた。
「沙和、何考えてる?」
「え?」
「何か変なこと考えてるんじゃないだろうな」
「そ、そんなんじゃないです」
疑うような表情の羽瀬君に、内心の動揺がばれないように必死になんてことない様子を取り繕う。
「‥‥ならいいけど。とりあえず、俺が病院にいってる間、誰も家に上げたりするなよ。外に出るのももちろん駄目だからな、必要なものがあったら買って来るから、遠慮しなくていい」
「…わかりました。ありがとうございます」
羽瀬君の言葉に苦い思いを抱きながら、私は素直に微笑んでみせた。