恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
therapy12



病院での勤務を終え、自宅のマンションへ帰る。

今までは、自宅に戻る前に外で外食を済ますか、それともコンビニで適当に買った弁当を買って帰り、家で疲れた身体に流し込むような日々だった。

でも今は違う。大切に想う人が、夕飯を作って自分の帰りを家で待ってくれている。

自分らしくもなく、思わず緩みそうになってしまう頬を引き締めてから部屋のドアを開けた。


「……。」


ただいま。

そういいかけた言葉を呑み込み、目を見張った。家に帰り玄関の電気を付ける、というここ最近は失っていた習慣を変に冷静になった頭でこなし、駆け上がるようにして部屋に上がる。

「沙和…?」

リビングにも沙和の姿がない事を確認すると、心臓の奥が凍りついたように冷めたのが分かった。

沙和の部屋、キッチン、脱水所、寝室。急いで家中の電気を付けて探し回ったが、沙和はどこにもいない。

冷静さを失った頭で再びリビングに戻ると、リビングのテーブルの上に置かれた一枚の便箋の存在に気がついた。
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