恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
『お世話になりました。
本当にありがとう、私なんかのために優しくしてくれて、優しい言葉をくれてありがとう。
でも私は、ここまで良くしてくれた羽瀬君にほんの少しでも恐怖感を抱いてしまう自分が許せなくて、周りの人を傷つけてしまうかもしれない自分の存在が許せないのです。
私の我が儘で、勝手にここを出て行く事にしてごめんなさい』
震える手で便箋を握りしめ、気がついたら俺は携帯を片手にマンションを飛び出していた。
「沙和…っ!」
沙和がここを出ていったのは一体何時頃なのか。
まだマンションの近くにいるのか。それとももう1人で遠くへ行ってしまったのか。
ただ一つ分かる事があるとすれば、あんな手紙を置いて残していったという事はマンションを出て行ったのは沙和の意思であるという事。セキュリティーが万全なこのマンションではそもそもそれは難しいだろうという事はわかってはいても、それでも沙和が無理矢理さらわれるような事態ではなかったという事実だけに少しの安堵を覚える。