恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
みんなに優しくして貰って、良くして貰って、私もう少しで幸せを感じてしまいそうになっていた。
駄目なのに。私は幸せになっちゃいけないのに。天津玲二を怖がる権利も、私にはない筈だ。だって彼をあんなに豹変させてしまったのは私。全部私のせい…。
「沙和」
気がつけば背後からそう私を呼ぶ声がして、膝から崩れ落ちるように座り込んでしまっていた私の肩を抱かれた。
「天津、先輩…」
「おいで」
そう言って差し出された左手に、自分の右手をそっと重ねる。
「ここからだと浅いから」
そう言った天津の目線の先には、大きな漁船や小さなフェリーの横に小さくたたずむように浮かんでいる小舟があった。
天津に手を引かれるまま小舟に向かい、そして足を踏み入れようとした時だった。