恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
「相澤…!!」
遠くから私の名前を呼ぶ、強い声に耳を刺された。その声に振り向けないまま凍り付いたようにその場で固まる。
「駄目だ、戻れ!」
そう叫ぶ声が段々近くなる。
(嘘…どうして…砂川君…)
砂川君の声を聞いて、さっきまで固めきっていた決心が一瞬で揺らぐ。戻りたいと、死ぬのが怖いと思ってしまう。
「どうした沙和、早く来るんだ」
「あ…私……」
天津に重ねていた右手を思わず放そうとすると天津はそれを許さなかった。手首から掴まれ直され、そのまま強い力で引かれた。
「え…わっ…!?」
抗えない程の強い力でぐいぐいと腕を引かれ、引っ張られて行った先は小舟ではなく漁船の方だった。
無理矢理といった形で船に連れ込まれた私を追うようにして砂川君も船に乗り込む。
(砂川君、こっちに来ちゃ駄目)
そう叫んで伝えたいのに、首に回された天津の右腕が、まるで猿ぐつわのように口を覆って言葉を発する事が出来ない。