恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】



激しい水音と、刺すように冷たい海水に襲われる。

水の中は真っ暗で音もなく、あまりの恐怖に意識を手放しそうになる。

苦しくて苦しくてたまらない。怖い。息を吸いたい。上にあがりたくてたまらない。心の中はそう饒舌に叫んでいるのに、それとは裏腹にぼうっと意識が遠のいていくのが自分でも分かった。

(私…もう死んでしまうのかな)

そんな事を思い諦めかけた時だった。


──相澤、大丈夫だから。落ち着いて。

(え・・・?)

いつか聞いた砂川君の言葉が、急に脳裏に浮かんだ。

──相澤、大丈夫だから。安心して、ゆっくり息を吐いて。

──そう、上手だ。

私が苦しくて苦しくてたまらなかった時、砂川君が私にかけてくれた言葉が今、耳の奥で聞こえるようだった。

諦めかけていた心が、ゆっくりと解けるように動き出す。

・・・生きたい。

落ち着くんだ。息も吸えないし深呼吸する事は出来ないけれど、それでも落ち着く事なら出来る筈。落ち着いて、落ち着いて、落ち着いて、自分を助ける為に、冷静になって。

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