恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
そう自分にいい聞かせ、息を吸うために、上にあがるために両手を仰ぐ。
(あ…)
その時、もう自分の身体は天津に縛られていない事に気がついた。
それでも、安心している暇など無かった。今にも意識を手放しそうになる程の苦しさに耐えながら上へ上へと両手を仰ぐ。
「はぁっ…、はっ、はぁ…っ、はっ…」
やっと海面から顔を出す事が出来、まるで一生分の呼吸をしたのではないかと錯覚する程に懸命に息を吸う。
荒い呼吸を繰り返しながら、このままでは身体が凍り付いてしまうと気がついた。とにかく地上にあがろうと、泳いでいるのか手足をばたつかせているのか定かでないような泳ぎ方で必死に明かりの見える方へ向かった。
「……っ」
(冷たくて、全身が痛い)
つかっている海水の温度が身体を痛い程に冷やす。早く岬にあがりたいのに、水を吸って重たくなった服や靴が、まるで鉛のように重い。
身体の感覚が段々と薄れていき、もう駄目かもしれないと泣きだしそうになった時。
ふわっと背後からあたたかな温度が私を包み込んだ。
(…え)
「相澤、もう少しだから頑張れ」
「……!」