恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
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私まで気を失う訳にはいかない。
そう思っていた筈なのに、私の精神は耐える事が出来なかったらしい。鈍い痛みで目覚めて最初に目に映ったのは病院の天井だった。
一瞬ぼうっとした後、すぐに意識がはっきりして、気がついたらベッドから身体を起こし病室を飛び出していた。
「…砂川君…!」
長い病院の廊下に、私の枯れてしまった声が響く。
(砂川君は?あの後、私はどれくらい眠っていたの?)
ふらつく身体を抑えるように廊下をつたいながら砂川君の病室を探して彷徨っていると、突然名前を呼ばれて腕を掴まれた。
「沙和」
「…羽瀬君」
私が振り向くと同時に、羽瀬君がハッとしたように悪い、と謝りながら私の腕を掴んでいた手をパッと離す。
触れられた事なんて、今の私にとってはもう何て事もどうでも良かった。
──それより。それより。
「大丈夫、隼斗はちゃんと生きてるから」
砂川君は無事なの?そう私が尋ねる前に、羽瀬君が私を安心させるように優しく微笑みながらそう答えてくれた。
「・・・良かった」
良かった。良かった。良かった。
砂川君が生きていてくれて良かった。
羽瀬君の言葉を聞いた瞬間に全員の力が抜け、気がつけばその場にへたりこむようにして座りこんでいた。