恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
「辛い記憶を思い返しても今の自分が危機に晒されるわけじゃない、怖くないと感じるようにするための訓練だと思ってくれれば良い」
「………。」
頭は少し興奮状態のまま、何とか頷いて返す。
ずっと、ずっと辛い記憶から逃げてきた。
でももう逃げちゃいけない。目を逸らしたら私はきっとずっと良くならない。
そういう治療なのだ、これは。
「まず、相澤の症状の原因になっている体験について聞かせてくれるか?」
「………っ」
そう質問された瞬間、反射的に体がビクっと跳ねた。
「今日はまだ詳しくじゃなくていいから、事実関係だけを簡単に教えて欲しい」
そう尋ねる砂川君の声色はさっきよりもずっと優しい。まるで大人が子供から優しく何かを聞き出そうとしているような。
(詳しくじゃなくていい。事実関係だけ…)