恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
「さっきから全然お箸進んでないよ、食欲がなくってもちゃーんと食べなきゃ。ね?」
そういってにこっと微笑む綾香の声色はいつもより一段と優しくて、心の奥がきゅっと緩んで思わず泣きそうになる。
綾香は私に何も聞かない。
職場に復帰した時も、いつも通り…ううん、いつも以上にすごく優しい笑顔で私の事を迎えてくれて、なにも聞かずにこうやって側にいてくれる。
だから──…だから、たまらなく甘えたくなるのだ。
「…っ、…っ。私…どうしよう、このまま砂川君が、お姉ちゃんみたいな事になったら、私…っ」
子供みたいにぼろぼろと両頬に大粒の涙をこぼしながら、心の声がそのまま直に漏れていく。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
このまま砂川君が死んじゃったらどうしよう。
砂川君のおかげで、生きていく希望を持てたのに。世界は、私が思っている程恐ろしいものではないのかもって、ようやくそう思えるようになってきたのに。
…それなのに。
──私には、もう砂川君のいない世界で生きていける自信なんてないのに。