恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】

「確かに一度、私を守るために結婚して欲しいって言ってくれたけど、でも、今は私を守る理由も何もないから、プロポーズの話はなかった事にしてくれって言われたの。私が身勝手な事した罰として、取り消しだって」

「…は?」

「だから、その…」

これからは自分の好きなように。自由に。

昨日の羽瀬君の言葉が耳の奥でこだまする。

…言いたい。もう私をおびやかす存在がないのなら、今までずっと抑えつけて痛い思いをさせてきた自分の気持ちを初めて、大切にしたい。

──あの時私が砂川君の事を大好きだって言ったのは、その意味は。

「私も、砂川君の事が好き。信頼とか尊敬とか、そういう事とは別で、その…私も砂川君が言ってくれた事と同じ意味で…」

大好き。

続けたかったそんな言葉は、砂川君に急に抱き寄せられたせいで遮られてしまった。

心臓が早鐘を打つ。砂川君と触れあっている全身が温かくて、あんまりドキドキしているせいであつい。

もう一度誰かに恋をする事なんて出来ないと思っていた。不安階層表には書かなかったけれど、本当は一番自分が出来ないと思っていた事。

不安階層表に書かなかったのは、書いてもきっと実践できるようにはならないと諦めていたからだ。

でも私は砂川君に再会して、砂川君の事を好きになった。



< 260 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop