恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
想像および現実エクスポージャーの治療は、トラウマを思い出す事でどれほど取り乱したとしても、再び被害を受けるわけではないという事を体感して理解していくという治療だ。
その中で、実際に患者がトラウマのために回避している状況に身を置いたり行動を起こしたりする現実エクスポージャーの治療には、客観的にみてリスクの高い状況を課題に使うべきではないとされている。
だとしたら、性行為はアウトだ。強姦がトラウマでPTSDを発症した患者が、エクスポージャー療法の治療として同意の性行為を行った例など聞いた事がない。
だから分からないのだ。もし俺が自分の欲望のままに相澤を抱いたら、相澤はどうなってしまうのか。
もし、相澤がまた過去の恐怖を身体で思い出すような事があったらどうする。
相澤の努力でせっかく改善してきていたのに、また過去のトラウマがフラッシュバックするような事があったらどうする。
発作で苦しめるような事があったらどうする。
──そしてその時、もしも俺が止めてやれなかったら。
相澤を、壊してしまったらどうする。
そんな事を考えたら、とても相澤に手なんて出せるものじゃなかった。
相澤と付き合う事が決まった日に誓った。もう二度と、何からも何者からも相澤を絶対に傷つけさせない。今まで相澤を苦しめてきた全ての恐怖から、相澤を解放してやりたいと。