恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
──上書きして欲しい。
そんな相澤の言葉は、俺の理性を崩壊させるには十分すぎる一言だった。
むしろ、俺が嫌じゃなければなんてそんな言葉を相澤の口から出させてしまう程に、俺の行動は相澤を不安にさせてしまっていたという事に気がついて臍を噛む。
小さく肩で息をしながら、俺の手をきゅっと握る相澤に尋ねた。
「相澤」
「…ん?」
「さっきの言葉、引き金引いたって分かってる?」
「……うん」
恥ずかしそうに小さな声でそう返事をする相澤が愛おしくて仕方がない。
ずっと、相澤にとってのその行為は恐怖の対象でしかないのだろうと思っていた。それを望んでいるのは俺だけなのだと。
でも、今の相澤に少しでも積極的な気持ちがあるのなら。俺に酷い過去の記憶の上書きを今望むのなら。
…臆病になっていたのは、俺の方だったのかもしれない。
俺は相澤を抱き上げてから寝室に運び、その華奢な身体をベッドの上にそっと落とした。
相澤の顔の横に手をつき、触れるだけのキスをしてから尋ねる。
「もし少しでも無理だと思ったら、遠慮しないで止めてって言える?」
そんな俺の問いかけに相澤が頷いた事を確認して、俺は再び相澤にキスを落とした。
キスを深くする程に相澤の漏らす声は甘さを増し、そんな声をずっと聞いていると気が狂いそうになる。
やがてその唇を相澤の首筋へとおろしていく。そして頬に添えていた右手を相澤の耳に移し、耳を少し擽るように指を動かしてみせると、俺の下で相澤の身体が大きくビクッと跳ねたのが分かった。
漏らしかけた声を唇を噛んで堪えたのだと分かると、俺は唇を首から離し、相澤が堪えたそれを引き出すように耳を甘く噛む。