恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
「隼斗…何でそんなに相澤さんの事構うの?」
ある日、クラスメートの女子に半ば責めるような調子でそう尋ねられた。
「…相澤さんはずるいよ。隼斗がそうやって構うから、相澤さんいい気になって隼斗の前で泣いてみせたりして、色目使ったりするんだよ」
「何を勘違いしてるのか知らないけど、泣かせたのは俺のせいだし、相澤は俺に色目なんて使わないよ」
あの日の一部始終を見ていたのだろう。根も葉もないようなでたらめで相澤を責める彼女の言葉に俺は憤りを覚え、そんな感情の滲む声でそう静かに言葉を返すと、まるで逆上したかのような口調で質問を重ねられた。
「じゃあ何、隼斗は相澤さんの事が好きなの…!?」
そんな言葉に、一瞬心臓に針を刺されたかのような痛みを感じた。
違うと答えた自分の言葉に偽りは無い。もちろん相澤の事は好きだが、それは友人としてであって。例え友人以上に想う何かがあったとしても、それは恋と呼ぶにはあまりに微妙で、曖昧なものだ。
ただ、放っておけないのだ。相澤が泣いていたら、俺は手を差し伸べてやらずにはいられない。助けてやりたいと思うし、その涙を自分の手で止めてやりたいと思う。
守ってやりたくなる。
相澤のあえかで儚い雰囲気は、きっと見るものの庇護欲を掻き立てる魅力がある。
…それだけだ。
事実、俺と相澤の関係はその高校生活を終えるまで変化を帯びる事は無かった。
そして卒業式の日に幾らか言葉を交わしたのを最後に、俺達は長い間会わなかった。
──…
「…ん」
腕の中にいつもはそこにない温かさを感じて目を覚ました。俺の腕の中で小さく寝息をたてる相澤の頭を起こさない程度にそっと撫でる。
まだ窓の外は暗い。行為を終えた後に俺も眠っていたらしい。
もの凄く懐かしい夢を見た気がする。高校時代、相澤と同級生だった頃の夢だ。