恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
自分の中に湧き上がる醜い感情に蓋をしながら、何とか冷静を装って言葉を返した。
「…そうだな、そこにいてくれた方が安全だな…。相澤の病気も最近は随分と良くなったが、それでも気をつけてやってくれ」
秋人との電話を終え──…思わずその携帯を痛い程に強く握りしめていた自分の右手に驚く。
秋人のマンションはこのクリニックや他のどの家よりもセキュリティが整っている事は確かで。相澤の心理状況を覗いては、この状況ではそれが最善の選択だ。このまま相澤を閉じ込めておかなかったら、相澤に天津の手が及んでしまう。
頭ではそう分かっている。
「ねぇ隼斗、隼斗の友達が今沙和ちゃんを匿ってるって言ったわよね?その友達って…男?」
「あぁ、そうだけど」
「えええええええ!」
楓の悪気ないそんな反応は、俺が必死に掻き消してしまいたい不安を煽る。
秋人は大学の医学部の時からの友人で、その言葉遣いや態度からは分かりづらいのだが、実はとても誠実で信頼できる奴だ。相澤がいなくなった時に一番に電話をかけて頼ったのは秋人だったし、今相澤の事で一番頼りになって信頼出来る人間は秋人だ。
そんな秋人を疑う訳ではない。だが、そう頭では分かっていても、もう誤魔化せない自分の感情は情けない程に素直だった。