恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
その翌日。
開院前に、秋人はクリニックへやってきた。
「…昨日、沙和にプロポーズしてきた」
そんな言葉を秋人から聞いた時、俺の頭は一瞬真っ白になった。
「…相澤は、何て答えたんだ」
まるで見えない何かに祈るような心地でそう尋ねた質問の答えに、俺は酷い動揺を隠す事が出来なかった。
相澤が、承諾した。
──結婚するというのか、秋人と。
自分でも情けなくなる程の激しい嫉妬心は、もう自分の心に嘘をつく事を許さない。
相澤が秋人のものになると知って初めて、自分がどれだけ相澤の事を想っていたかを思い知る。相澤に対して、治療者として許されない感情を確かに抱いているのだ、俺は。
そんな自分の本心を自覚した所でもう遅い。相澤の事を放っておけないのも、守ってやりたいと思うのも、もうずっと昔からその気持ちの根幹には恋心があったのだ。
そんな俺の内心は、不純なんて生温いものじゃない。もっと目も当てられないほどに醜い。