恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】

──どうか。どうか無事でいてくれ。自分の手も足も命もくれてやるから、だからどうか無事で。

お願いだから生きていて欲しい。
相澤が生きてさえくれる為だったら俺はどうなっても構わない。

もし相澤に何かあった時には、俺はきっと正気でいられない。…その時にはきっと俺はこの手で天津を殺めるだろう。

今にして思えば、相澤を助けてくれと直感的に頼み願った先、それは神や仏などではなく。
どうしてか、言葉を交わした事も無ければ話でしか知らなかった筈の今は亡き相澤の姉だったような気がする。






✳︎



あの日あれだけ無事でいて欲しいと願った大切な存在が、今では俺の腕の中で小さな寝息をたてながら眠っている。

もし、相澤にGPS付きのイヤリングを送っていなかったら。それを考える時と、思わず息が詰まる程に恐ろしい。

もうそれをつける必要がなくなり、今は裸になった相澤の耳にそっと触れる。本当に耳が弱いらしい。眠って居たはずの相澤は俺の指から逃れるように僅かに動いた。

「…ん」

相澤がそう小さく息をもらし、一度きゅっと閉じた後、やがてその目をゆっくりと開ける。
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