恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
「おはよう、沙和」
実際には真夜中だったのだのだが、とろんとしたまだ眠たげな様子でまばたきを繰り返す彼女にそう声をかけた。
「……え…?」
つい数秒前まで眠っていたというのに、急にその瞳を見開いて──やがて、その顔を林檎のように真っ赤に染めた。
「砂川君…今…だって、高校の頃から一度も…」
「あの頃とはもう色々と違うだろ」
その反応に思わず吹き出しそうになりながらそう返す。
もう触れられない雪の結晶ではなくなった筈なのに、そんな彼女の反応はあまりに可愛くて困る。
お返しだと言って耳元で返された言葉は、それから暫くの間、俺の耳の中に甘く居座った。
『あえかな君の甘い誘惑。』fin.