恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
そう言うと、砂川君はどこか得意気に微笑んだ。私の返答が予想通りだったのだろう、そのしてやったりな表情が何だか少しだけ不本意だ。
「じゃあ今日はこれで終わりな。駐車場まで一緒に行こうか」
「うん。ありがとうございました」
そうぺこりと頭を下げて診察室を出る砂川君の後をついて行く。そしてロビーまでたどり着き、受付を通り過ぎて砂川君が出口のドアに手をかけようとした時に自分の足を止めた。
「どうした?」
「だって。私まだ診察料とか払ってないし…」
「そんなの受付してないんだから当然だろ、帰るぞ」
「ええっ」
そう言ってスタスタと病院から出る砂川君を慌てて追いかけ、私も病院の出口をくぐった。
「砂川君待って、でもそういう訳には…」
「俺がプライベートで個人的に相澤を診たんだ。予約も受付の形跡もない患者からの診察料が入ったって病院側も困るだろ?」
(そ、そういうものなのかな)
府に落ちないまま、砂川君の2メートル後ろくらいをついて歩きながら駐車場に向かう。
「じゃあ、来週はちゃんとクリニックの患者さんとして診てくれる?」
「さぁ、どうだろうな」
そんな私の質問に、砂川君はそう答えて肩をすくめてみせた。