恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
「もー、とぼけても駄目よ。土曜日に耳鼻科か何かの病院の駐車場で、沙和が若くてスタイルも良くて格好いい男の人といるの私見たんだから」
「………!」
──まさかの土曜日。思いがけない綾香の言葉に思わず目を丸くする。
きっとその病院は耳鼻科ではなく精神科だ。それに綾香が言っている若くて格好良い男の人というのは…砂川君の事だ。
「沙和は男性恐怖症なのに、病院に付き添ってくれるような素敵な恋人がちゃんといたなんて私知らなかった〜」
(こ、恋人!?)
そんな綾香の突飛な発言に目を剥く。
「恋人って、ち、違うよ!砂川君はあのクリニックの精神科医さんで…えーと、つまりあの人はお医者さんで、あの日はただ診察をして貰ってただけだよ」
「へぇ、砂川君て言うの。でも彼、お医者さんっぽい格好してなかったよ?それに駐車場まで患者についてくなんて変よ」
否定しても、綾香はそう言って府に落ちない様子で首をかしげた。確かに綾香の言う事ももっともだ。…それにしてもすごい偶然だと思う。まさか朝倉医院から出て駐車場まで砂川君と一緒に歩いている所を綾香に見られていたなんて。