恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】


「えっと、高校の時の同級生なの。だからプライベートで診察してもらってて。あの病院、耳鼻科じゃなくて精神科なんだ」

精神科にかかっているというのを告白するのには少しだけ勇気がいったが、信頼をおいている綾香に隠し事はしたくないと本当の事を答えた。

綾香が少し驚いたようにして目を見開く。

「そうだったんだ。精神科って、メンタルヘルスケアクリニック…みたいな感じの所よね。もしかして、沙和の男性恐怖症について診てもらってたとか?」
「うん。実は…」

そう言って、自分が心的外傷後ストレス障害だと診断された事。そして、持続エクスポージャー療法という治療を受ける事。その治療がどういったものなのかを綾香に話した。

「なるほどね、体質とかじゃなくて病気だったんだ。でも治るんでしょう?良かったね、沙和ずっと悩んでたし」

綾香が良かった良かったと言って頷く。

「うん、私も治るって知った時は嬉しかった」
「でもそのエクスなんたらっていう治療法は驚いたなぁ。結構な荒療治って感じだけど…。

でもまぁそれはそうとして、お医者さんになった高校の時の同級生と再会とか素敵だね。ロマンスがはじまりそう」
「え、ロマンス?」

さっきまで腕を組んで真剣な顔をしていたのに、すっかり目をキラキラさせてそんな事を言う綾香にあっけにとられる。

私にとって、クラスの人達から好かれてて、女の子からも男の子からも人気があった砂川君は昔からずっとキラキラして見えていた。

そんな砂川君と、冴えなくてパッとしないような私がどうにかなんてなる筈もないし、昔からそんな事を考えた事は無い。
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