恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】

スマホをローテーブルの上に置いて通話を再開した。

「ご、ごめんなさい砂川君。相澤です」
『あぁ、相澤か。宿題はちゃんとやってるか?』

スピーカーから流れる砂川君の声には身体が反応しない事に安堵しながら、砂川君のまるでどこかの先生のような物言いに思わずクスっとする。

宿題。1日に3回、10分程度で呼吸再調整法の練習をする事だ。最初は砂川君から貰ったプリントと睨めっこをしながらの練習だったけれど、何回か繰り返すうちに何も見なくても呼吸再調整法で呼吸が出来るようになってきた。

「勿論やってるよ。会社でも空いた時間にやってたら、新しい健康法?って同期の子にびっくりされちゃった。…あ、それで次回なんだけど、土曜日と火曜日だったら医院に行けます」

『じゃあ次の診察はこの間のセッションから丁度一週間後の土曜日にしよう。時間は、この間と同じ10時で良いか?』

「うん。お願いします」

ローテーブルに置いたスマホに向かってコクンと頷く。すると、一拍置いて砂川君の声が応えた。

『相澤、ちなみに今スピーカーで通話してる?』

そう言い当てられ、どうしてわかるのかと驚いて目を丸くする。

「えっ、どうしてわかったの?」
『明らか変な間があったからな。もしかしたらスピーカーに切り替えたのかと思って』

そう言って砂川君が小さく笑いながら答えた。砂川君にはなんでもお見通しのようだと私もつられて笑う。

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