恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
『スマホを直接耳に付けて男性と電話するのは苦手か?』
「…うん。耳に直接届く感じが少し」
『そうか。じゃあ、そういった類の相澤が日常生活を送る上で苦手だと避けている事を、他にも考えておいてくれ』
そういった類の、という事は、PTSDを発症してから苦手になってしまった事という意味だろう。
…それなら沢山ある。日常生活を送る上で、昔は何も考えずに普通に出来ていた些細な事が、急に恐ろしくて出来なくなった。
「うん。わかった、思い出しておくね」
そう答え、その後いくらか話をしてから砂川君との電話を終えた。
ローテーブルに置いたスマホの画面の通話終了ボタンを押して、自分の手が汗ばんでいる事に気がついた。
いくら相手は砂川君とは言えど、こんな風に仕事とは関係のない電話を男の人としたのは久しぶりで、精神を張り詰めさせていたのだと気づく。
──そういった類の相澤が日常生活を送る上で苦手だと避けている事を、他にも考えておいてくれ。
ほうっと一先ず息をつきながら、そんな砂川君の言葉を思い返す。