恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
「実際には安全でも、患者にとってはトラウマ関する記憶を引き起こす引き金である事から避けている行動、場所、対象に取り組んでいくというのが現実エクスポージャーだ」
私が男の人と受話器に耳を当てて電話をするのが苦手…という事がそうなのだろうと納得する。
確かにそれは客観的にも事実的にも全く危険な事なんてないのに、私にとっては恐ろしくて苦痛な行為だ。
「そして今日から相澤が取り組んでいくのは、まずはこの現実エクスポージャーの方。
これまで回避してきた事に向き合う事で、恐れていたような事態は起きないと認識するための治療だ。」
「……っ」
砂川君の言葉に思わず身が固くなった。
…私はこれから、怖くて苦手だとずっと避けてきた事に取り組んでいかなければないらないのだ。
「やれそうか?」
砂川君が優しく、けれどどこか私を挑発するようにその形の整った目を細めて笑う。
「…頑張る」
そう答えた声は情けなく震えたが、砂川君はそう言った私を褒めるかのように優しく微笑んでくれた。