恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
そんな謎は、彼の顔を少し見つめているうちにすぐに解けた。
「砂川君….?」
「良かった。一瞬忘れられてるかと思った」
そう言って小さく笑う白衣を着た彼を、私は未だ信じられない目で見ていた。
(嘘…)
少しだけ長めの前髪の奥に覗く、切れ長で綺麗な黒い瞳。形良く整った薄い唇。私とはまるでコンパスの違う長い脚。
昔と違うのは、すっかり大人びた雰囲気と、制服を着ていたあの頃とは違い今は白衣を纏っているという事くらい。
──砂川隼斗。
目の前に座って私の事をからかうような表情で見つめている彼は、高校生の頃のクラスメートだった。卒業以来連絡は取っておらずそれきりずっと会っていなかったが、在学中は席替えで隣の席になる事も多かった事もあり砂川君とは仲が良かった。
「えーっ、砂川君!?凄くびっくりした…。…あの、それでちなみにここは一体?」
「ここは今俺が勤めてる病院。病院って言っても、心療内科と精神科の心療クリニックなんだけど」