恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
(心療、クリニック)
あまり聞き馴染みのなかった単語を心の中で復唱し、そういえば砂川君は高校を卒業した後、医学部に進学したんだったっけと記憶の引き出しが開く。
ここが診療系の病院で、それでここにいる砂川君が白衣を着ているという事は…砂川君、ここのお医者さんなんだ。
「凄いね砂川君、すっかりお医者さんみたい」
「みたいじゃなくてそうなんだよ」
そうつっこまれ、それもそうだねと言って小さく笑う。
…ようやく状況が掴めてきた。
私、会社の飲み会の帰りに部長に絡まれてて困っていた所を砂川君が助けてくれたんだ。
──離してやって下さい。
どこか耳に懐かしいと思ったあの声は、思い返せば砂川君のものだ。
私の主治医だという言葉も、機転を利かせてとっさに出たものなのだろう。
それで情けない事に、腕を掴まれて男性恐怖症を発症して意識を失った私は…って、あれ?
そこまで事を整理した頭は、やがて一瞬思考回路を停止させた。
(…まさか)