恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
「今からやる想像エクスポージャーの治療では、相澤のトラウマの記憶に立ち戻って貰う。
トラウマの記憶がふとした時にフラッシュバックしたりするのは、トラウマをきちんと思い出す事を回避して、その記憶を頭がきちんと処理していないからだ」
確かに、その時の事を思い出す事を私は何より回避してきた。
「相澤が話した事で俺がどう思うかは気にせず、今から45分間、トラウマに関する記憶を全部語ってみて」
「………っ」
トラウマに関する記憶を──…45分間も。
(そんなの…そんなのやっぱり絶対無理)
涙目になって汗ばんだ両手を膝の上できゅっと握る私に、砂川君が優しく声をかける。
「最初からいきなり辛い経験を話さずに、そこに至る経緯からゆっくり話してみても良い」
「………。」
「大丈夫、今俺が相澤に話して欲しいと頼んでるのは、過去の過ぎた時間の事だ。どんなに思い出しても、相澤にとって危険な事は何も無い」