恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】

「相澤、椅子の横に立って」
「あ、うん」

言われるままに立ち上がって椅子の横に立つと、砂川君もデスクチェアから立ち上がった。そしてメジャーを私の肩の側までのばし、いくらかカチカチと調整をする。

「1m80cm」
「え…」
「もう少しだけ近づける?相澤の方から」

(砂川君に、近づく…)

言われて、砂川君に一歩というにはまだ足りないくらいの小さな距離を詰めた。

「1m70cmくらいかな。これから診察の度に、少しずつ縮めて行こうか。その方が一気に1mの距離を割るよりも抵抗が少ない気がする」

そう距離を測り終えた後、砂川君はメジャーをしまい再び腰を下ろした。
そんな砂川君の言葉に、なるほど、と頷く。

「そして今度の課題は,エレベーターで見知らぬ男性と2人になる、か」
「あ・・・うん。会社のエレベーター、今までずっと避けて階段を使ってきたから、ちゃんとエレベーターを使ってみるね」
「エレベーターが平気になったら随分楽になると思うし、頑張ってみた方がいいな。あぁ、それともう座っていいぞ」

そう砂川君に小さく笑われ、ずっと立ちっぱなしだった事に気がついた。
少しだけ赤面しながらストンと椅子に座る。

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