恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
(沙和がタクシー!エレベーター!)
一瞬沙和の言葉に驚いて腰がぬけそうになったが、すぐに沙和が精神科のクリニックで男性恐怖症克服の為の治療を受けている事を思い出した。まるで荒療治のような課題に取り組んでいることも。
「でも、そんな一気に頑張らなくても・・・顔色悪いわよ?」
「そんな事ないよ、平気平気」
「・・・・。」
そう力なく笑う沙和は、私の目から見たら”平気”なようには見えない。
無理するのは良くないんじゃないと言いかけて、その口を閉じた。
こうやって無理やりにでも自分の苦手意識に立ち向かっていくというのがこの治療の原理なのだろうか。
精神病や心理学などかじった事もないような自分には、何が正しいのかが分からない。
素人が勝手に心配して、頑張っている沙和に余計な事を言うべきではないのかもしれない。
そう思って黙っていたが、昼休みになって売店に行こうと沙和に誘われ、いつもなら階段で行く所をエレベーターで行こうと腕を引かれた時はさすがに止める気になった。