角松 ヤエ 29歳 OL
「こういう所は初めてですか?」
「あ、はい。」
「ウフッ、緊張しなくて大丈夫ですよ~。」
ようやく本題に戻って、
今月も水曜日に取得した有給。
“とある場所”へと一人で来ていた。
お呼びがかかって、黒いハットを被った女性に後ろについていくと、
こじんまりした個室へと通される。
人生初の尿路結石、
人生初のインフルエンザ、
30歳を手前に控えて訪れた体の異変。
“これは行くっきゃない”
・・と私の重い腰をあげさせた。
私だって一応みんなと同じ様な道を歩んできた。
幼稚園の時はセーラームーンになりたいと将来の職業を決め、
小学生の時は、
<好っきっなっ人~がっ♪
優しかぁった♪>
と、モー娘。の<ザ☆ピ~ス!>
を毎回カラオケで熱唱し、
中学生の時は、アジカンとオレンジレンジがケツメイシして世界の中心で愛を叫んだ平井堅が瞳をとじた後に野ブタをプロデュースして、
高校生の時は先生に見つからないように、
授業中ずっとケータイをいじって、
「おい角松、なに泣いてるんだ?」
「・・スッ・・スッ・・先生・・
ウゥゥ・・ヒロが死んじゃった・・」
と結局隠れて恋空を読んでいた事がバレてこっぴどく叱られ・・
・・・・そんな私でも、
これだけは経験してこなかった。