虹色アゲハ
「天才って…
自分で言うのってどうなの?
むしろチンピラ小僧にしか見えないんだけど」

相手にしない方がいいと判断した揚羽は、そう言って通り過ぎようとした矢先。


「じゃあチンピラでいいよ、バツ1の西原サン」

誰も知るはずのない情報と、とっくに捨てた本名を口にされて、踏み留まる。

こいつ本物のハッカーだ…


「アンタの詐欺情報、けっこう出回ってんだよ。
このままじゃ捕まんのも報復されんのも時間の問題だけど…
俺と組むなら全部揉み消してやるし、チンピラらしくボディガードもしてやるよ。
断るなら、アンタのデータ売らせてもらうけど」

「…何が目的?」

「まぁ金と、楽しそうだから?」


つまり一時的な収入より、継続的な報酬が欲しいってワケ…
バカそうに見えても、ハッカーだけあって賢い男だと、警戒を強める。


「悪いけど、脅しには屈しない主義なの。
私は誰も信用しないし、誰とも組む気はない。相手が男なら尚更ね。
データも、売りたいなら好きにすれば?」

そう、人生に希望がない(・・・・・・・・)揚羽には…
誰かに屈してまで守りたいものなどなかったのだ。
< 10 / 268 >

この作品をシェア

pagetop