虹色アゲハ
するとハッカーは、ハハッと吹き出す。

「脅して悪かったよ。
俺は安藤倫太郎。
お詫びにコレやるよ、今回のターゲットのデータが入ってる」
そう言ってUSBメモリを差し出した。


「…いらないわ」
断りながらも…
そこまで知ってるのかと内心驚く。

「あれ、デカい口叩いてたクセにけっこービビり?
心配しなくても罠なんかじゃねぇし、たとえそうでも脅しには屈しないんだろ?
俺がどんな言いがかり付けても気にしなきゃいーじゃん」

言い終えるや否や、揚羽のバッグにそれを押し込む。


「ちょっ…」
慌てて取り出そうとすると。

「つかそんなセコいマネしなくても、アンタを煮るなり焼くなり出来んだし、いらないなら捨てればいいよ」
そう言い捨てて、倫太郎と名乗った男は去っていった。


USBを取り出した揚羽は…
少し考えて、またバッグに戻した。

実際その男の言う通りだと思ったし…
その笑顔は邪気がなく、あまりにも可愛らしかったからだ。


そして当然、そのデータによって詐欺効率が劇的に上がった。
< 11 / 268 >

この作品をシェア

pagetop