虹色アゲハ
『だからっ、そっちに誘導するのはやめてください!
あたしたちを別れさせたいんでしょうけど、その手には乗りませんからっ。
てゆうか、こんな事して恥ずかしくないんですかっ?
揚羽さんにはがっかりしました』

「ああそう。
じゃあ好きなだけ騙されれば?」


バカな女…
あんたみたいな女がいるから、結婚詐欺が絶えないのよ。

電話を切ったあと、そう苛立つ揚羽。


だけど…
あの時の私もきっと、そうなっただろう。

愛する人を信じたくて…
希望に縋りつきたくて。

ふうと溜め息をついて、そう思い直す。


そう、1人で子育てするのは大変だ。
子供が病気になれば、その間ずっと仕事を休まなければならない。

それは共働きでも同じ事だが…
ひとり親の場合、自分の収入のみで全てを賄わなければならないため、数日の欠勤でも死活問題になる。

にもかかわらず、一週間近くも店を休んでいた事を考えると…
恐らく柑愛には、他に頼れる場所がないのだろう。

無理をして倒れれば、全てが立ち行かなくなり…
その危険性と隣り合わせの中、無理をするしかなくて。
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