虹色アゲハ
ビル下でタクシーを止めると、周囲から「あっ!」と声がしたが…
お客さんに今の状態を訊かれるのが面倒だった揚羽は、そのままタクシーに乗り込んだ。


それから少しすると。

出勤したばっかりでもう帰路に着いている状況を、不審に思った倫太郎から…
〈なんかあったのか〉とメッセージが入り。
すぐに揚羽は電話をかけた。


「別に大した事じゃないわ。
逆上した柑愛にお酒かけられて、早くシャワー浴びたかったから帰ってるだけ」

『はっ!?
っんだよそいつ…
そんな女助けてやる必要ねぇだろっ』

「仕方ないわよ。
相手は凄腕の結婚詐欺師だからね…
周りが見えなくなるくらい、骨抜きにされてんでしょ」

『だからって!立派な暴行罪だろっ。
そんなヤツ訴えろよ』

「バカね、子供がいるのよ?
その子に罪はないのに、こんな事でなんらかの悪影響を与えるわけにはいかないでしょ」

その言葉に、倫太郎は胸を締め付けられる。

自分も、そう思ってくれる家族が欲しかったと…
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