虹色アゲハ
そして、そんな目に遭っても相手の状況を思い遣ってる揚羽を。
にもかかわらず、1人で悪者になってる揚羽を。
抱き締めたくてたまらなかったが…
出来るわけもなく。

せめて気の利いた言葉で慰めたかったが…
なんて言ったらいいのか、上手く言葉に出来ず。

2人の間に沈黙が流れる。


揚羽もまた、倫太郎に甘えたくて電話を切れずにいたが…
心配もかけたくなかったため。

「…じゃあ切るわね」

「おい!」と引き止める倫太郎をスルーして、電話を終えた。



そうして、自宅マンション手前のダミーマンションに着くと。

「聡子さん、大丈夫っ!?」
なぜか鷹巨が駆け寄ってきた。


「あんた、なんでいんの?」

「例の鳥カフェの友達から、聡子さんがびしょ濡れっぽい感じで帰ってたって連絡がきて」

そこで揚羽は、タクシーに乗り込む時の声がその男だったと合点がいく。


「そう。
だからって、ここには2度と来るなって言ったはずだけど」

「ごめん。
けどそれどころじゃなくて…
聡子さんが大変な時に、呑気にそんな言いつけ守ってられないよ」

そう言いながら鷹巨は、紙袋からバスタオルを取り出して、それを揚羽にふわりと掛けた。
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