虹色アゲハ
「バカなの?
エレベーター昇れば自分ちなんだから、バスタオルで足止めされるより、さっさとシャワー浴びた方がいいに決まってるでしょ」

「そうなんだけど…
そういうのって、被害を受けてるのは身体だけじゃないと思うから」
そう言って鷹巨は、揚羽をそっと抱きしめた。


「…バカなの?
あんたも汚れるわよ?」

「うん、ちょっとでも俺がもらえたらなって」
抱きしめたまま、揚羽の頭を優しく撫でる。

それは、少しでも心の負担を減らしたいといった趣旨で…

本当はやり切れない気持ちを抱えていた揚羽は、思わず抱き返してしまう。


「ほんとバカね…
そんな事したって、今だけ利用されて終わりよ?」

「だから、利用していいって言ってるし…
終わったらまた始めればいいよ」

「ふふ、そんなんじゃ永遠に始まらないかもね」

「ええっ、俺永遠にストーカー人生っ?」

「それか、永遠に利用される人生?」

「うわ、この際インコでも飼って慰めてもらおうかな」

「あんたの場合、インコにもバカにされてたけどね」

「ほんとだ!」と間抜けな鷹巨に、揚羽はふふっと吹き出しながら…

その優しいバカさにまた、じんわり癒されていた。



< 131 / 268 >

この作品をシェア

pagetop