虹色アゲハ
部屋に入ると、そこは今チェックインしたかのような状態で…

ほんと、手掛かりを残さない男ね。


「それで?
なんでナンバーワンにも手ぇ出すワケ?」

「そんなの、揚羽ちゃんを庇うために決まってるじゃん。
別れる時に柑愛が、揚羽さんに何か言われたからでしょ?ってキレてたからさっ」

「…つまり心変わりを装って、怒りの矛先をそっちに向けたって事?」
揚羽は一瞬揺さぶられそうになった心を、慌てて本題に縛り付けた。


「そっ。
相手がナンバーワンなら、プライドの傷も最小限に抑えられるし。
1番稼いでるコだから、詐欺のターゲットにしても不自然じゃないし。
その地位を掴めるような魅力的なコになら、目移りしてもおかしくないし。
他にも色々便利だからね」

「なるほどね。
だったら別れ話の時に心変わり(それ)を言うべきだったわね。
今さら庇ってもらっても手遅れだし、無駄骨もいいとこよ」

「手遅れって、もうなんかされたんだっ?」

「そうよ。
あんたの詰めが甘いせいで、こっちはビールまみれよ」
プイと憎らしげに顔を背けると。
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