虹色アゲハ
「…ごめん」
不意に抱き寄せられて。

揚羽の心臓は大きく弾ける。


と同時に、甘くて残酷な匂いに包まれて…
それにぎゅうっと抱き包まれる。


「っ、離してよっ」

胸が早鐘を打つとともに、苦しいほど締め付けられて…
必死に久保井の腕から逃れようとするも。

「…離さない、って言ったら?」
さらにぎゅっと抱き締められる。


「ふざけないで!
早く離してっ…
悪いと思うなら他の方法で示してよっ」

「他の方法って?」

「知らないわよっ。
とにかく離してっ…」

すると久保井は腕を解いて、揚羽の顔をクイと持ち上げると。

その唇に自分のそれを重ねた。


刹那、心臓が止まって固まる揚羽に…

久保井の唇がゆっくりと絡んで…


激しく胸を握り潰された揚羽は、久保井を思い切り突き飛ばした。


途端、ぼろっと不可抗力に涙が零れて…

今度は久保井が、きょとんと固まり。
直後、小馬鹿に吹き出した。


「え、キスくらいで泣くっ?
あ、もしかして…
そーゆう、実は純粋設定で落とす作戦?」

「…だったらなにっ?
少なくとも、そういう行為で落とそうとするよりマシだと思うけどっ」
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