虹色アゲハ
「聡子、って呼んでもいい?」
ピロートークで、揚羽の髪を撫でながら尋ねる鷹巨。

「…いいけど偽名よ?」

「うん、それでも。
さん付けじゃないだけで、一歩前進かなって」

「……相変わらずバカね」

「聡子は相変わらず正直だね。
…好きだよ」
そう囁いて、鷹巨がチュッと額にキスを落とすと。

揚羽はキュッと胸を締め付けられる。


発端のキスもそうだが、こんな行為をしたのは…
単独の頃、詐欺目的でした数回だけで。
プライベートでは、11年前の仁希以来初めてだったため。
その甘く情熱的な行為に絆されて、鷹巨に愛着を感じていたのだ。


「私の事、何も知らないくせに?」

「これから知ってくよ。
信用はされるもんじゃなくて、勝ち取るもんだと思ってるから」

「さすが、自称やり手営業マンね」

「自称って、ちゃんと結果残してるし。
聡子にもいつか、結果で気持ちを証明するよ」

「その前に、騙されて終わりかもね」

「騙さないよ、聡子は。
これだって、ちゃんと利用って言ってたし」

「バカね、私は詐欺師よ?
今までの発言だって、あんたを信じさせる手口かもしれないわよ?」
< 138 / 268 >

この作品をシェア

pagetop