虹色アゲハ
その時。

「おはよ、聡子」
グイとベッドに抱き戻される。


「鷹巨っ…
ごめん、もう帰らなきゃ」

「えっ…
じゃあ送ってくよ」

「ううん、行くとこあるからタクシー呼んで」

「…わかった。
でも俺んちに来た時のタクシー代は、強制で俺払いだから」

「もうっ…
わかった、ありがとう」
押し問答の時間も惜しんで了承すると、すぐに服を着始めた。


「あと…」

「まだあるのっ?」

「うん。
利用でいいから、もっと会いたい」

その不意打ちとひたむきな想いに、思わず胸がぎゅっとなる。


「……とにかく、また連絡するから」

「うん、待ってる」
チュッと唇を重ねる、いちいち甘い行動に…
戸惑う揚羽。



そうして、呼んでもらったタクシーに乗り込むと。
すぐに携帯の電源を入れ、倫太郎の家に向かった。

まだ起きているなら、直接謝りたかったのだ。



倫太郎は、やってきたタクシーに合わせて揚羽の動向が変化したのを確認すると。
ひとまず胸を撫で下ろして、帰路についたが…

途中でそれが自分の家に向かっていると察して、先に帰ろうと慌てて戻った。
< 140 / 268 >

この作品をシェア

pagetop