虹色アゲハ
結局のところ…
落とす自信がなくても他にいい策が思いつかない限り、この色恋勝負に挑むしかなくて。
なにより、いつまでも自分ばかりがしてやられる訳にはいかなくて。

柑愛の件を感謝する事で、いつもの態度とのギャップ効果を狙ったのだ。


「でも、この借りはちゃんと利子つけて返すから」
そう言って揚羽は…
とどめに強い瞳で、初めてじっと見つめると。

久保井が吹き出すようにして、それから逃れた。


「本当に面白いね、揚羽ちゃん。
この前泣いてたコとは思えないよ。
ますます惚れそうだけど…
いったいどんな心境の変化?」

「バカなの?
あれは作戦だって言ったでしょ?
何の変化もしてないわ」
そう不敵に笑いながらも。

その変化は鷹巨のおかげだと、心に浮かべる。


そう、たとえ一時凌ぎでも…
仁希との甘い記憶や感覚を、鷹巨が上書きしてくれたからで。

幻となったそれよりリアルなそれの方が、心を強く刺激していて…
久保井の影響力を弱めていたからだった。


「すごいね揚羽ちゃんっ。
ナンバーワンじゃないのが不思議なくらいだよ」

「上には上がいるからね」
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